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「万作・狂言十八選」 第11回

28日に、国立能楽堂で「万作・狂言十八選『花子』」を拝見しました。

実は、最近、あまり狂言の舞台を観ていませんでした。
見てみたいと思った演目は一通り見たかな、という思いと、一日限りの上演が多くて、
なかなか都合を合せにくいという事情が重なって、ついつい観劇の機会を逃していました。
(そういえば、このブログの「能楽」カテゴリの記事数も、「宝塚」カテゴリの
記事に追い抜かれそうだし。というか、みーちゃん関連の記事を別カテゴリにしているので、
それを足すと、記事数は既に大差で「宝塚」>「能楽」になっている…)

改めて振り返ってみると、万作家の狂言を観るのは、昨年の「法螺侍」以来。
その前に観た舞台もホール狂言だったので、能楽堂で万作家の古典の演目を観るのは、
なんと、一昨年10月の「万作を観る会」以来でした。

久しぶりに能楽堂で見た狂言の会は、とても新鮮でした。
開演時間になっても、開幕のブザーもなく、客席の照明が落ちるわけでもない。
無音のうちに揚幕が上がって、演者が、やはり音もなくすり足で橋掛かりに現れる。
見所も、拍手で迎えるわけでもないので(注:この発想は宝塚に染まりすぎ)
余所見をしていて、演者の登場に気づかない観客も少なくない。
特に、脇正面と中正面の前方席は、前を向いていると揚幕に背中を向けることに
なるので、そちらに注意を向けていないと気づかない。

開演前のざわつきが少しずつ静まり、最後まで言葉を交わしていた観客も、
演者が二の松に差し掛かる辺りで、さすがにその気配に気づいて口を閉じる。
揚幕が上がってから、演者が本舞台で最初の一声を発するまでの、わずか1~2分。
その間に、会場内が少しずつ、少しずつ、狂言の世界に染まっていく空気に
えもいわれぬ心地よさを感じました。

舞台の背景は、鏡板に描かれた松と竹だけ。
僧、施主。男、冠者、妻。それぞれの役の決まりごとに従った装束。
小道具といえば、演目を問わず使われる扇や葛桶と、「無布施経」では僧の袈裟と数珠、
「花子」では座禅衾だけ。
音楽が流れるわけでも、効果音が鳴るわけでもなく、演者の声だけが響く舞台。
上演時間40分間の「無布施経」は登場人物がわずか二人。
上演時間が1時間を少し上回る「花子」も、登場人物は、男と妻、そして太郎冠者の三人。
そのほかには、「無布施経」では一人、「花子」では二人の後見が舞台上に現れるだけ。

狂言ばかり観ていた頃には当たり前だった、これらのいろいろな決まりごとが、
歌舞伎や宝塚、ミュージカル、小劇場など、いろいろな舞台を観るようになった今、
本当に最小限の要素で構成されている舞台なのだなぁ、と改めて新鮮に感じられました。

「無布施経」

「万作・狂言十八選」第11回、最初の演目は、万之介さんと深田さんの
「無布施経」でした。
檀家を訪れて祈祷をした僧が、いつもならもらえるお布施を受け取れず、
それとなく檀家に気づかせようとあれこれ画策するという、狂言にありがちな展開の
実に他愛もない話なのですが、これがものすごく面白かったのです。

昨年見た「呂蓮」で万之介さんが演じた僧は、とても有難いお坊様でしたが、
今回の僧は、登場からなんだか胡散臭い様子でした。
狂言に登場する宗教人は、仏教の僧しかり、山伏(修験者)しかり、宗教という
権威の象徴として茶化される役回りになることが多いのですが、
この僧もご多分に洩れずやってくれました。

檀家を訪れてご祈祷をする段になって、「南無妙法蓮華経」と唱え始めたと思ったら、
それに続く文句がなんと「にょろんにょろんにょろん…」でした。
祭壇(舞台上にはないけれど)に向かって、数珠を取り出して唱える文句が
「にょろんにょろん…」って(爆笑)
「茸」の山伏が「いろはにほへとの印」を披露したり、「魚説法」の僧が
魚尽くしのお経を唱えたりするのが狂言の世界なので、「にょろんにょろん…」の
お経もさもありなん、という感じではありますが。
また、万之介さんが、この「にょろん…」を、いかにも読経のような節をつけて
もっともらしい調子で唱えるので、一層おかしかったです。

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六月博多座大歌舞伎

「歌舞伎美人」サイトに、六月博多座大歌舞伎公演の配役が掲載されています。
昼の部「紅葉狩」に、「腰元 野菊」役で芝のぶさんのお名前が!
公演チラシにもお名前が載っています。
チラシにお名前が載ることは少ないので、とっても嬉しいです(^^)

「紅葉狩」の腰元 野菊は、更科姫の命で維茂に舞を披露する場面のある
大きなお役です。一昨年の納涼歌舞伎、勘太郎さんの更科姫では、
鶴松くんが野菊で、とても可憐で可愛らしかったです。
芝のぶさんの踊り、さぞ綺麗でしょうね。

博多座…。行きたいなぁ…。でも遠いなぁ…。
平成18年の勘三郎さん襲名公演は、「人情噺文七元結」の芝のぶさんの
お久を観に博多まで足を伸ばしましたが、今年はちょっと難しそう。
お近くの方、もしくはお財布とお時間に余裕のある方はぜひお出かけください!

五月の舞台写真

新橋演舞場の今月の舞台写真が販売されています。
芝のぶさんのお写真は、傾城姿(今月は一役だそうです)の3枚。
私は、今月はまだ拝見していませんが、舞台をご覧になった方に教えていただきました。

「大江戸りびんぐでっど」がシネマ歌舞伎に

昨年12月に歌舞伎座で上演された「大江戸りびんぐでっど」が、今年の10月に、
シネマ歌舞伎として公開されるそうです。
http://www.theaterguide.co.jp/theater_news/2010/05/17_03.php

芝のぶさんもご出演のこの作品、音楽がとても楽しいので、また見られるのが嬉しいです。

赤坂大歌舞伎

七月に、赤坂ACTシアターで上演される「赤坂大歌舞伎」で、
芝のぶさんが「人情噺文七元結」のお久をなさるそうです!!
http://www.tbs.co.jp/act/event/kabuki/

文七元結のお久役は、勘三郎さんが(当時は勘九郎さん)
大阪・中座で上演される際に、当時は名題下だった芝のぶさんを抜擢し、
芝のぶさんがその抜擢に応えて好演したという、芝のぶさんの出世作でもあり、
はまり役でもあるお役。

勘三郎さんは、その後も、襲名披露の博多座、シネマ歌舞伎として
映像を残している演舞場での上演と、特別な舞台となった「人情噺文七元結」で、
続けて芝のぶさんをお久役に起用なさっています。
勘三郎さん演じる左官の長兵衛と、娘のお久のやり取りが涙を誘う作品です。

平成20年のシネマ歌舞伎公開後、勘三郎さんの文七元結は今回が初めて。
発表されている配役では、角海老女房・お駒役の秀太郎さん以外は、
シネマ歌舞伎の配役と同じ役者さんがお勤めになります。
山田監督が監修された映像を、スクリーンでご覧になった役者の皆様が、
その体験を今回の舞台にどう生かすのか、とても楽しみです。

そして、今回もう一つ楽しみなのが、お駒役の秀太郎さん。
秀太郎さんは、芝のぶさんを高く評価していらっしゃるそうです。
(愛之助さんいわく、秀太郎さんは“芝のぶちゃんのファン”でいらっしゃるとか)
秀太郎さんと芝のぶさんがお芝居で絡むのを拝見したことがないので、
今回、お二人の場面がどんなふうになるのか、とても楽しみです。

※こちらの文章で、秀太郎さんが、芝のぶさんが演じられた小せんを
褒めていらっしゃいます。また、歌舞伎座の筋書のインタビューにも
同様の趣旨でお話されていたことがありました。

片岡愛之助さん公式サイトより
「秀太郎歌舞伎話」
2003年2月 秀太郎歌舞伎話⑤
 ~義経千本桜~ 上方の本当と江戸の洒落
http://ainosuke.com/st3.html